2016/2/3

凍結卵子による出産

41歳で卵子凍結

女性大阪府内の女性が41歳のときに凍結保存した卵子によって昨年、女児を出産したそうです。興味深い点は、がん等の病気が理由ではなく、健康な女性が仕事など社会的な理由で凍結卵子から出産に至ったところです。女性の観点でその背景を考えます。

女性が41歳で卵子凍結(らんしとうけつ)を選択したのは、急な決断ではなかったようです。すでに30代後半のころから2ヶ所のクリニックで計十数個の卵子を凍結保存したそうです。しかし、その時点では未婚。医療にかかわる仕事も忙しいけれど、子どもがほしいという気もちがありました。(参考1)

この女性に限らず、仕事が波にのっていたり忙しく代わりがいない状況になると、子どもがほしい気持ちがあるまま仕事を続ける女性も多くいます。働かなければ生活の基盤が崩れたり、同じポジションに復帰できるか不安になってしまうものです。

卵子凍結とは

卵子凍結(らんしとうけつ)とは、その言葉のまま女性の子宮内の卵子を採取して凍結することです。もともと卵子凍結の技術は、がんや抗がん剤、放射線治療が原因で卵巣喪失や妊娠が不可能になる可能性がある女性にたいして、治療が始まる前に卵子を凍結保存するために確立されてきました。

その成果は悪性リンパ腫で治療が必要になった10代の女性が卵子凍結後、10年以上保存していた卵子で妊娠に至った例もあるので、病気治療が必要な女性にとっては大切な選択肢の1つだと考えられます。

ところが最近は、病気や治療ではなく将来のことを考えて卵子凍結をおこなう女性が増えています。「子どもはほしいけれど、今はパートナーがいない」など現状をふまえて、将来の妊娠に備えたくて選択するケースが増加しつつあります。

卵子凍結について国内でも様々な見解があり、一概に妊娠するために選択することが良いとも言い切れない現状です。たとえば昨年、日本産科学会では健康な女性の卵子凍結を「推奨しない」との考えを示しました。卵子凍結が可能になった今、どういった状況で卵子凍結をすすめるべきか、女性が改めて考えたい問題です。

凍結卵子で顕微授精

転機が訪れたのは2年前の結婚で、パートナーの了解を得たところで凍結していた卵子を解凍して顕微授精(けんびじゅせい)にふみきったそうです。

顕微授精は体外受精(たいがいじゅせい)と同じくくりに考えられがちですが、詳しくは体外受精よりもさらに踏み込んだ方法と考えられます。

体外受精は子宮内から採取した卵子を、体外で精子と受精させます。その受精卵を再び子宮に戻します。一方で顕微授精は、いくつかの方法がありますが精子1個を卵子に直接注入します。

体外受精も保険がきかずに高額になりますが、顕微授精はそれを上回る金額になります。ですから、いくら妊娠したいといっても簡単に選択できる方法ではありません。今回の女性の場合も費用は数百万にのぼったそうです。

卵子凍結と出産確率

では、どんな理由であれ将来のために卵子凍結をして保存しておいた場合、必ず妊娠できるのでしょうか?

例に挙げると、今回の凍結卵子から出産に至った女性が通院したクリニックでは、2010年から健康女性の卵子凍結を開始。2015年末までにこの女性を含む229人の卵子を凍結保存したそうです。そのうち17人が体外受精、出産に至ったのは今回の女性だけです。

卵子は凍結して管理されますが、解凍時に壊れているケースもあります。つまり、高額な卵子凍結を選択しても妊娠して出産できる保証は現在のところ100%ではないとわかります。

妊娠を考えにくい社会

妊娠と仕事

卵子凍結から出産に至った女性は、早くに父親を亡くし一家の家計を支えてきたそうです。働かなければいけない状況と赤ちゃんがほしい気持ちをコントロールしている女性も多いなか、家族で食事をした記憶がほとんどない女性は「自分の手で、温かい家庭を作りたかった」そうです。(参考2)

この背景には、妊娠や出産を考えにくい社会があります。通院や妊娠のためにフルタイムや正社員雇用を諦める女性は少なくありません。大げさな表現ではなく、仕事をとるか妊娠・出産をとるか岐路にたつことは、働く女性にとって避けにくい問題です。

もしも社会全体で健康女性の凍結卵子についての是非を討論するならば、その前に働く女性が妊娠や出産を考えやすい社会についても考えてほしいと願います。

2016・2・3 e-妊娠、みみいペン


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