PCOSとその後(子宮内膜癌、糖尿病)

不妊と大きくかかわりがある「PCOS」ですが、赤ちゃんを授かった後でもその症状が自然に軽快することは珍しいようです。PCOSは成人病と少なからず関係をしています。ここではPCOSを長期的に見た、子宮内膜癌、糖尿病などの危険因子について説明しています。

ここで特筆しておきたいことは、「PCOSだからといってこれらの発症率がいきなり高値になる」ということではありません。知識をつけることは「起こりうるリスクを知る」ということでもあります。

子宮癌や糖尿病などの病気は自覚症状を伴わずに進行しているケースが多く、今のうちから知識をつけることが決して無駄ではありません。そしてもし発症してしまったときにでも「早期発見」こそ、何より重要な治療の第1歩となるのです。

子宮内膜癌

PCOSでは、子宮内に癌(ガン)が発症する危険が高いことが報告されています。子宮癌には子宮頸部癌と子宮内膜癌とがあり、子宮の入り口付近に発症するものを子宮頸部癌、子宮内部に発症するものを子宮内膜癌(子宮体部癌、子宮体癌)と呼んできます。

PCOSで特に注意すべきは「子宮内膜癌」です。通常女性は月経が起こると、子宮内膜は生理としてキレイに剥がれ落ちます。しかし無排卵症を伴うPCOSでは、子宮内膜を持続的に増殖させてしまう可能性があるのです。

子宮内膜癌はこの子宮内膜に発症する病気で、子宮内膜が慢性的に肥厚しているほど発症する危険があります。子宮内膜癌は閉経に差しかかる40後半~50代に多く見られますが、40歳未満の若年性の子宮体癌も5~6%に見られるという報告があります。

排卵障害では、プロゲステロンを伴わないエストロゲンの慢性的分泌が子宮内膜を過形成させ、また高アンドロゲン血症や高インスリン血症も子宮内膜癌発症に関与しているとも言われています。

子宮内膜癌の治療にはホルモン療法、子宮内膜掻爬術、子宮全摘出手術などがありますが、いずれにせよ定期的な健診と早期発見が最大の対策と治療法となるでしょう。

糖尿病

糖尿病とは、摂取した糖がエネルギーとして分解されずに、いろいろな合併症を引き起こしてしまう病気です。糖尿病では血糖値が高くなり、そして尿に糖が漏れるくることが特徴です。

通常、人は食事をすることで血糖値が高くなります。その血液中の糖をエネルギーとして、体内の細胞に分解するものが「インスリン」という物質です。カロリーをたくさん取りすぎたり、運動不足だったりすると、「たくさんの糖」を分解するために「たくさんのインスリン」が必要となります。

このように体内にインスリンがたくさん分泌されている状態を「高インスリン血症」といい、糖尿病を発症しやすいことが知られています。

インスリン抵抗性

「インスリン抵抗性」とは、カロリーの過剰摂取や極端な運動不足でもないのに、インスリンがうまく作用してくれない状態を言います。そしてその作用を補うために結局は「高インスリン血症」となってしまうのです。

インスリン抵抗性の原因ははっきりとはしていませんが、PCOSではインスリン抵抗性を示すことが多く、非肥満患者の27%に、肥満患者の42%にインスリン抵抗性が存在したという報告(海外)があります。

日本でも同様な報告もあり、PCOSではインスリン抵抗性を示して、インスリン非依存性糖尿病(NIDDM、2型糖尿病)の発症のリスクファクター(危険因子)だと考えられています。

また妊娠中に発症する「妊娠糖尿病」につきましては、PCOS患者がそうではない対照妊婦に比べて「発症数に差は見られなかった」という報告がありますが、体重管理には十分に気をつけるべきでしょう。

循環器疾患

インスリン抵抗性が糖代謝異常を引き起こし、冠動脈疾患の危険があるとされています。冠動脈疾患とは難しい言葉ですが、心臓の周りにある血管の働きが悪くなる病気です。

「心筋梗塞」「狭心症」などが代表的な病気で、血管内が詰まったり酸素が送られなかったりすることが原因です。コレステロール高値、高血圧、喫煙、高脂肪食、運動不足、肥満などが関与しています。

高血圧症

PCOSでは高血圧の発症頻度が高いとの報告もあります。ただ多くの因子が関係していて、PCOSだから高血圧を発症するというわけではなさそうです。また不妊治療によって高血圧が引き起こされることもあるようで、慎重に経過を見ていくことが望ましいでしょう。

関連不妊用語

多嚢胞性卵巣症候群 子宮内膜癌 子宮内膜 無排卵症 排卵障害 プロゲステロン エストロゲン 高アンドロゲン血症 ホルモン療法 高インスリン血症 インスリン抵抗性



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