多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)とは

不妊においての多嚢胞性卵巣を最も簡単に説明すると、卵巣内に卵胞がたくさん存在するものの、卵巣の表皮が硬く厚くなってしまい排卵が難しいということです。

多嚢胞性卵巣とは、卵巣が腫れてその中に多数の嚢胞がある病態を指し、多嚢胞性卵巣の9割の人に排卵障害があるといい、また排卵障害の人の20~40%が多嚢胞性卵巣症候群であると言われています。

PCOSとは卵巣の多嚢胞性腫大とともに、無排卵に基づく月経異常と不妊を訴え、多毛や肥満を伴う症候群である。

多嚢胞性卵巣症候群は1935年、Northwestern大学の「Stein」と「Leventhal」らによって、「月経異常、多毛、肥満に加えて、両側卵巣の嚢胞状腫大を有する症候群」として報告したのが最初のことです。

当初は彼らの名前を取って、「Stein-Leventhal症候群」と呼ばれていましたが、現在はこの用語はほとんど使われていません。PCOSはその後の研究で、内分泌異常(高LH、高アンドロゲン)を伴うケースが多いことが明らかになっています。

多嚢胞性卵巣症候群を英語では、Polycystic ovary syndromeと言いますが、日本でもこれを略して「PCOS」と呼んでいる人もたくさんにます。また「症候群:syndrome(S)」を抜かしてPCO、あるいは多嚢胞性卵巣と呼ぶことも多いですが、これはほぼ同意語と考えていいでしょう。

*厳密には無月経、多毛、肥満、卵巣の腫大などの病態を伴うものを「症候群」をつけ多嚢胞性卵巣症候群と呼びます。

PCOSの定義には多少の違いこそありますが、以下の「臨床症状」、「形態的変化」、そして「内分泌学的所見」から多嚢胞性卵巣症候群と診断をしていきます。(詳しくは多嚢胞性卵巣(PCO)の症状のページも参照を)

多嚢胞性卵巣症候群と形態的変化

まず多嚢胞性卵巣症候群の最大の主徴となるのは、「卵巣の嚢胞状腫大」と「白膜の肥厚」という卵巣の形態的変化です。

卵巣内に10ミリ以下の発育を停止した小卵胞(液体が入った嚢胞状態)がたくさん存在することによって、卵巣が膨れ上がり正常の倍以上の大きさになることも珍しくありません。(1卵巣あたり10~100個の卵胞が認められる)

またコラーゲン線維の沈着によって白膜(卵巣の皮)が肥厚して硬化(硬くなり排卵が難しい)してしまいます。通常、卵巣の白膜は0.1ミリ程度の厚さしかありませんが、多嚢胞性卵巣では0.15ミリを超え、ときには0.5~0.8ミリに達するケースもあるようです。

そしてPCO患者の超音波診断では以下の写真のように、卵巣内に多数の中小の卵胞が、真珠のネックレスのように繋がっているかのように見えるのが特徴です。(ネックレスサイン)

ネックレスサイン

写真/多嚢胞性卵巣症候群の超音波診断像
不妊治療ガイダンス第3版から引用

多嚢胞性卵巣症候群と臨床症状

PCOSでは月経異常、不妊、多毛、肥満、男性化徴候などの「臨床症状」(現場判断が出来るような症状)を伴いますが、欧米に比べて日本では肥満や多毛の頻度が低いことが報告されています。以下にその割合を示しておきますが、日本においては月経異常と不妊の数値が特に高いようです。

多嚢胞性卵巣症候群における各種症状の発現頻度

PCOGoldezieher
&Green
(1963)
*1079例
Thompson
&Taymor
(1980)
*101例
青野ら(1976)
*61例
森ら(1987)
*36例
日産婦
生殖内分泌委員会
(1993)
*424例
月経異常51%89%87%89%92.1%
肥満41%37%21%25%20%
多毛69%86%23%14%23.2%
男性化徴候21%---1.7%
不妊-55%93%83%98.7%

*参考/PCO症候群の診断と治療

多嚢胞性卵巣症候群と内分泌学的所見

PCOSの内分泌学的特徴としては、視床下部~下垂体~卵巣というホルモン分泌過程の不調和があげられます。具体的には、高LH血症、高アンドロゲン血症が中心となり、また糖代謝異常、高インスリン血症も起こりやすくなります。

またPCOSと診断される10~30%程度の人が「高プロラクチン血症」を伴うとも言われています。プロラクチン(PRL)は乳汁を出すように働きかけるホルモンですが、この数値が高いと排卵障害や黄体機能不全が起こりやすくなります。

関連不妊用語

多嚢胞性卵巣症候群 卵巣 卵胞 排卵 排卵障害 無排卵性月経 内分泌異常 高LH血症 高アンドロゲン血症 ネックレスサイン 超音波検査 視床下部 下垂体 高インスリン血症 高プロラクチン血症 プロラクチン 黄体機能不全




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