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頸管性不妊

膣内に射精された精子が、卵子に出会うために1番最初に通過する場所が、「子宮頸管」と呼ばれるところです。(しきゅうけいかん:ネット上では「けい」の字を「頚」と書き子宮頚管と書かれることも多い)

子宮頸管とは子宮の入り口の部分を指し、膣と子宮腔を結んでいる細い場所にあたります。排卵期に現れる「おりもの」(以後は頸管粘液)は、この子宮頸管から分泌される粘液のことで、膣や子宮体部から分泌される「おりもの」とは少し違うのです。

子宮頸管粘液

*イラスト不妊治療ガイダンス第3版から引用

頸管粘液は卵巣内の「卵胞」が育つことによって分泌されるようになります。(イラスト)

これは卵胞が発育することで、卵胞自身が「エストロゲン(卵胞ホルモン)」の分泌を始めるからです。そしてこの作用によって頸管粘液が排卵直前には、粘度が少ないよく伸びる(糸を引く)卵白のような状態に変わるのです。

膣内は常に「ばい菌」を増殖させないように酸性に保たれていますが、射精された精子は酸性を嫌います。しかしこの頸管粘液は「アルカリ性」であり、精子の運動性を促して受精能力を高める働きをしてくれます。

この子宮頸管、あるいは頸管粘液に障害があることを「頸管性不妊」と呼び、不妊原因の1つとなってしまうのです。

頸管性不妊

精子が子宮頸管を通過して「子宮腔」まで泳いで行くためには、2つの重要な条件があります。その1つ目は精子自体に問題がないということです。精子の運動や形態に異常があると、卵子に会うための過酷な移動は難しくなります。

そしてもう1つ、子宮頸管に問題がある「頸管不妊因子」です。これは主に頸管粘液の性状が悪いときに起こり、精子の通過を拒みます。頸管粘液は、上記にも説明した「粘度が少ないよく伸びる(糸を引く)卵白のような状態」こそ、もっとも精子の活動を活発にしてくれるのです。

また頸管粘液が正常に分泌されないこともあります。もともと卵胞の発育不全でエストロゲンの分泌が少なく、「頸管粘液を分泌しなさい」という卵巣からの指令が行き届かないとき。あるいは指令は行き届いているものの、子宮頸管側が「それ」に反応をしてくれないときなどです。

その他にも子宮頚管内に、感染、炎症などのトラブルが起こっていることもあります。最近になって増え続けている「クラミジア」は子宮頸管に炎症を起こして、頸管粘液の性状を悪化させる原因となります。

頸管性不妊の治療

子宮頸管炎

「子宮頸管炎」とは子宮頸管に細菌が侵入して炎症を起こしたものです。クラミジアや淋菌などの病原菌が存在している症状には、抗生物質で比較的に簡単に治療ができます。

頸管粘液の改善

頸管粘液の性状に関わる治療には、2つの考え方があります。1つ目は頸管粘液を改善、増やすことを目的とした治療です。頸管粘液はエストロゲンの生産量に関係して分泌されていますので、「エストロゲン」そのものを増やせば頸管粘液も増やすことになります。

エストロゲンを増やすためには、直接「プレマリン」という卵胞ホルモンの薬を内服する治療もあります。また「エストラダーム」という貼り薬をエストロゲン補充に使用する場合もあるでしょう。

またたくさんの卵胞が育てばたくさんのエストロゲンが分泌されると考えて、卵胞をたくさん成長させる治療もあります。「過排卵刺激」というこの治療法はhMGという排卵誘発剤を毎日のように注射することで、卵胞をたくさん育てて頸管粘液の分泌を促します。

人工授精(AIH)

頸管粘液の性状に関わる2つ目の治療の考え方は人工授精です。人工授精(AIH)とは、排卵日に合わせて夫の精子を注入器で子宮の奥に送り込ませる方法です。つまり頸管粘液の改善をしなくても、子宮頸管の先まで精子を運んでしまえば妊娠は可能という現実的な考え方です。

頸管性不妊は「子宮頸管」に問題があるわけですから、その部分をパスして精子を送り込んでしまう人工授精こそ頸管性不妊には最適な治療法と考えられています。

実際の人工授精のデータには、男性不妊を伴っていなければ3~4回の周期の反復で、30%前後の妊娠率が期待できるとあります。

抗精子抗体

頸管粘液や精子の状態が良好なのに、精子が子宮頸管内外で動きを止めてしまうことがあります。このような場合には、頸管粘液に精子の運動を阻害する「抗精子抗体」という抗体が存在していることがあります。

抗体とは自分のカラダに異物が入ろうとするときに、その異物の進入を防ぐために作られます。「抗精子抗体」とは相手の男性の「精子そのもの」に抗体が出来てしまうものです。

この抗精子抗体が1度できてしまうと頸管粘液だけではなく子宮腔や卵管などに現れて、精子の受精能力を低下させたり運動能力を阻害します。

また特殊な例ですが、抗精子抗体が男性の精子に最初から存在していることもあります。抗精子抗体のすべてが不妊原因となるわけではありませんが、いずれにせよ精子の動きや受精能力が障害されるときには、抗精子抗体の治療法として「体外受精」が第1の選択となっていきます。

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