OHSS(卵巣過剰刺激症候群)

女性の卵巣は親指大ほど(3~4cm)の臓器ですが、その中の卵(卵胞)が過剰に刺激されることによって、卵巣が膨れ上がり、腹水や、ときに胸水などの症状が起こることをOHSS(卵巣過剰刺激症候群)と呼びます。

OHSSは排卵誘発の際に、過剰に卵胞が刺激されることが1つの原因です。経口剤のクロミフェン療法で発症することは稀で、hMG-hCG療法(ゴナドトロピン)で発生しやすいことが知られています。

PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)のhMG-hCG療法ではOHSSや多胎妊娠の発症頻度が高く、OHSSの発症率は10%程度、多胎妊娠が30%程度と言われ、いったん重度のOHSSを経験すると、2度と同じような治療が受けられなくなることがあります。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の症状

自分で分かる症状

  • お腹が張る(腹部膨満)
  • 腹痛および腰痛
  • 急激な体重増加
  • 吐き気
  • 尿量減少(乏尿)
  • 下痢
  • 息苦しさ

*下腹部に違和感を感じる他の疾患としては、子宮筋腫、卵巣腫瘍、子宮腺筋症、妊娠子宮などがあります。

病院で分かる症状

  • 卵巣腫大
  • 腹水(胸水)の貯留
  • ヘマトクリット値45%以上
  • 血圧低下
  • 白血球数15000/mm3以上

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の原因

卵巣内の卵胞が一気に成長してしまい、それに伴い卵巣が腫大して、その表面の血管から水分が腹腔内へ漏出することが原因となります。

漏出された水分は腹水として貯留され、血液が濃縮して尿量が減少するようになります。その結果、腎機能障害、電解質異常、血栓症、呼吸障害などを引き起こします。

卵胞が一気に成長してしまう原因としましては、過剰な卵巣刺激がE2(エストラジオール)の高値を示す誘因となり、さらに排卵誘発を行なう際のhCGが、卵胞を必要個数以上に成長させてしまうのです。

OHSSは軽症、中等症、重症と分類されています。hMG-hCG療法において、治療が必要となる重症OHSSは約3%、ARTの場合は5~15%が認められました。また多量のhMGとhCGを使用しない排卵誘発の場合はOHSSを発症することは稀です。

PCOSでは血中のLH値が高いために、hMG製剤に含まれる「LH成分」が卵胞を過剰に働きかけてしまうと考えられています。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の発症

OHSSは排卵誘発を使用する際に頻繁に起こりうる、副作用としての重大な合併症です。OHSSが発症するかどうかは、その個人の体質が大いに関係しています。

一般的には、排卵誘発による刺激に卵巣が敏感に反応する人が起こりやすくなります。具体的には卵巣の反応性がいい年齢(18~35歳)、痩せ型、卵巣に多数の卵胞が存在、エストラジオールの高値などが当てはまります。

卵巣に5~8ミリ程度の多数の卵胞がネックレス状に並ぶPCOSの人は、特に発症しやすいことが知られています。PCOSの人が排卵誘発を行なうと、20個から30個、時にはそれ以上の卵胞が発育してしまって、卵巣がこぶし大以上に腫大してしまうこともあります。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)のリスク因子

OHSSのリスク因子

  • 比較的体重が軽い
  • PCOS(多嚢胞性卵巣症候群)患者
  • 小卵胞が卵巣皮質周辺に多数存在(ネックレスサイン)
  • 血中エストラジオール(E2)が3000pg/ml以上
  • 黄体機能補充にhCGを使用
  • 難治性不妊症に対する過排卵刺激
  • 体外受精(IVF-ET)の調節卵巣過剰刺激にGnRHを併用
  • 妊娠成立時(hCGが大量に分泌されるため)

OHSSのリスク低下

  • 年齢が36歳以上
  • 低ゴナドトロピン性無排卵症
  • 肥満を伴う
  • エストラジオールレベルの低値(2000pg/ml以下)
  • 成熟卵胞数の一定量(10個以下)
  • ルテアールサポート(黄体ホルモン補充)にhCGを投与しない
  • GnRHアゴニストを使用しない

副作用とインフォームド・コンセント

PCOSにおいて排卵誘発の治療を受けるときは、OHSSや多胎妊娠の発生に十分気をつけなければなりません。まずゴナドトロピン療法(hMG-hCG)を開始するときには、医師からのOHSSの説明をしっかりと受ける必要があります。(インフォームド・コンセント/説明の上での同意)

不妊治療を行なっている評判のいい病院では、リスクについても十分に説明してくれるところが多いようです。しかしそんな病院ばかりではなく、「OHSSなんて副作用(リスク)は知らなかった!」と、発症後に初めて不信感を募らせる人が多いのも事実です。

OHSS(卵巣過剰刺激症候群)の治療

軽度や中度のOHSSのときには、外来でその経過を観察することが多いようです。しかし重症以上の症状が確認できる場合は、入院してその後の状態を管理していくことも多いでしょう。

OHSSの治療は「これ以上症状を悪化させない」ということが基本になり、自然に症状が治まるのを待つことになります。OHSSの症状を悪化させる「hCG」の投与はもちろん中止をします。大きくなり過ぎた卵巣は「破裂」の可能性があるので、日常生活では安静が必要になります。

現状ではOHSSの治療には積極策と消極策があり、専門家の間でも賛否があるようです。例えば腹水穿刺(水を抜く)を施行するケースもありますが、腹圧を低下させて卵巣表面から新しい腹水の生産を呼び込んでしまい血液濃縮を促進するという意見もあります。

OHSSでは体内の水分量のバランスが非常に大切だと考えられています。尿の排出量と水分摂取量とのバランスを保ち、腹水を増加させないことが自然治癒への第1歩です。

尿の排出が少ないのに水分を補給すると、腹水を促す可能性があります。しばらくして卵巣からの水分の漏れが抑えられれば、腹水が減少して血液のほうに水分が戻ってきて、結果として尿量が増加することになります。

血中水分の割合が増えてヘマトクリット値(赤血球の割合)が40%以下に下がれば、多量の尿が排出されて腹水も減少されます。(利尿剤も効果的になります)

お腹の張りが著しい重症OHSSのケースでは、膠質浸透圧の上昇をはかるためにアルブミン(血液中の蛋白質)を投与したり、腹水を静脈内に還流する方法(腹水還流法)などの治療が行なわれます。

実際の治療や入院については、とても参考になる体験談がありましたので、こちらにリンクさせていただきます↓

OHSSでの入院体験談/サチのおうち

OHSSの今後の対策

軽度、あるいは重度のOHSSの症状に頻繁に悩まされている人にとって、「未熟卵子体外培養体外受精法(IVM-IVF)」という治療が今後に有効になる可能性があります。

この治療方法は周期の初めからほとんど卵巣刺激を行ないません。そして卵胞の成長過程で採卵をしてしまい、体外で成熟させるというものです。詳しくはPCOSと体外受精(IVM-IVF)のページで説明しています。

発症させないことが何より大切

以前、OHSSの発症率は、クロミフェン療法(経口排卵誘発)で3.1%(重症例0)に対して、ゴナドトロピン療法(注射/hMG-hCG)では、59.2%と驚くほど高い上に、重症例も14.4%にもなりました。(日本産科婦人科学会生殖内分泌委員会の報告)

この報告を受けて現在ではOHSSを回避するために、様々な治療が行なわれています。例えば、純粋FSHを用いるとOHSSの発症率は有意に低下することが報告されています。

超音波診断による慎重な観察はもちろんのこと、血中エストラジオールの測定、薬剤の投与量や使用方法など、有効手段や治療方法を選択していき、また医師の技量も向上しているようです。

関連不妊用語

多嚢胞性卵巣症候群 卵巣 卵胞 OHSS 排卵誘発剤 クロミフェン hMG-hCG療法 多胎妊娠 エストラジオール hCG hMG LH ネックレスサイン 黄体 過排卵刺激 体外受精 GnRH 黄体ホルモン GnRHアゴニスト インフォームド・コンセント IVM-IVF 超音波診断



もっと見る→